研究プロジェクト PROJECT

研究プロジェクト名 衛星観測とモデルシミュレーションとの融合による長時間洪水予測の実装:
洪水を災害にさせない社会の実現に向けて

研究開発代表者 芳村 圭 東京大学 生産技術研究所 教授
JSTによる研究プロジェクト概要紹介ページ(外部サイト)

「長時間洪水予測技術」とは?

現在、洪水による被害額は世界では毎年約4兆円に上るとされています。国内でも2019年の台風19号では、この1回で1兆8千億円に上る被害額が発生したと推計されており、気候変動による極端な降水の増加により、洪水被害は今後ますます悪化するとされています。
洪水による被害・災害を防ぐには、堤防をはじめとしたインフラの整備や増強はもとより、今あるダムや水門等の制御等のより適切な実施、将来の気候変動の影響も踏まえた都市のあり方の見直しや防災施設の計画が必要です。また、洪水による被害を減らすには、洪水の発生をなるべく早く把握し、誰もが発災前に効果的な諸対策をうつための時間的余裕をもてるような防災対応が必要です。
しかし、これらを実現するためには、3つの課題があります。 1つ目は、早期に洪水を感じできる予測技術の開発です。現状の洪水予測は早くても6時間前であり、その時点からでは十分な防災対応を行うための時間が不足しています。加えて、予測の精度や情報のきめ細かさも足りないため、洪水が起きる可能性のある場所をピンポイントで特定し、集中的に対策を打つことが困難となっています。
2つ目は、このような洪水予測の情報が、自治体や企業など様々な方のニーズに応じたかたちで提供、伝達されておらず、多くの人が情報を有効に活用できていないことです。 3つ目は、予測時間が短いこともあり、予測情報を受ける市民や自治体、企業が、最適な防災の取り組みを、すぐに、かつ積極的に実行できる時間的余裕がないことです。

研究プロジェクトの概要

この研究プロジェクトでは、これらの課題を解決する3つの研究テーマを設定し、長時間かつ高精度、詳細な洪水予測技術を開発し、この情報を伝達し、社会全体で防災対応を連動させ最適化するための技術基盤を開発します。その上で、自治体・企業・市民との連携により、社会実験等を通じて、行動や社会の変革を行うための道筋や方法を明らかにすることで、「洪水を災害にさせない社会」の実現を目指します。

研究プロジェクトの概要

チームと研究内容

洪水予測技術開発チーム

リーダー 芳村 圭 東京大学 生産技術研究所 教授

地球観測技術とシミュレーション技術の最先端を統合し、新しい長時間先の高精度洪水予測技術の開発する。

情報統融合チーム

リーダー 廣井 慧 京都大学 防災研究所 准教授

洪水の進行と情報の届きにくさの関係・原因を、新しい情報の仕組みから探り、予測情報がより届く社会を目指す。

社会変革チーム

リーダー 中村 晋一郎 名古屋大学 工学研究科 准教授

多様な専門家・地域の方々と協力し、予測技術によって生まれる社会課題の把握と、技術導入の道筋をつくる。